アラサーバイ♂らむきーブログ

らむきー と申します。バイセクシュアルです。男の人も女の人も好き、ただどちらかと言うと男の人の方が好き。という 人間です。大阪在住。

出会いなおし/森絵都

久々のレビューですな。



当たり外れの差が大きい短編集だった。
全6編のうち、好きなのは
「出会いなおし、カブとセロリの塩昆布サラダ、むすびめ」
残りの3編は意味不明。既にシナリオは忘れた😅
しかし、前者の3つはものすごくいい話。大好きだ!!

時を経て同じ人に会うことは、単に会う というより、 出会い「なおす」ということだ。
やり直す、書き直す、考え直す など、何かの動作をもう一度繰り返す。 出会うことを繰り返す ことは、そこに新鮮さが必要だ。
会う のではなく、出会う。
出会うのは初めて顔と顔を付き合わせることであるから。
髪型や顔つき、服装がごろっと様変わりしていても、あの頃の面影を相手に感じた時、 「この人と自分は出会い なおして いるんだな」
と感じる。

最近の自分と重なる。
数ヶ月前に別れた人と久しぶりに会った。
顔はまだハッキリ覚えているし、声もどんな服装が好きなのかもわかっている。
改札を出てこちらに向かってくる姿も付き合っていたあの頃のままだった。
しかし恋人関係で無くなった相手と 会う ことは、新たな関係性の上で 出会う ことなのかもしれない。友人として。元彼として。そこにかつての恋心はない。
2人を繋ぎ止めるものが無くなり、ただの友人同士になったからこそ、出会いなおす 意味が如実に実感できる。頻繁に会う訳ではないから、毎回新たな気持ちで。

出会いなおし とは新たな価値観だった。言い気付き。



カブと〜 は、デパートの惣菜売り場で買ったカブのサラダにカブが入っておらず、問い合わせの電話をかけたことから巻き起こる大トラブルの話。主人公が求めていたのは謝罪でもお詫びの返金でもない。上辺だけのごめんなさい を繰り返すんじゃなくて、自分でちゃんと食べて欲しい ということだっった。この話、ものすごく現実感がある。結局食卓に並ぶのはカブのサラダの他にもう1つあるのだが、それがまた面白いオチになっている。

むすびめ は、小学校時代にクラスメイト全員で参加した30人31脚の大会の話。
自分のせいで大敗を喫したことを大人になっても汚点に感じ、同級生と会うのを後ろめたく思っている女性。
これも分かる!! 小学生はおろか中学生の頃、人に迷惑をかけまくっていた自分には、思い返すと恥ずかしくて喉から苦い胃液が逆流してくるような思い出が少なくない。特に自分のせいでその他の人に迷惑をかけたという経験は容易に脳裏からは消えてくれない。
いつまでも残る。
そして、大人になりあの頃から大分時間が経っているのに、ある日突然フラッシュバックしてきて、わたしを苦しめる。
「アンタが悪かったんだよ」と。
この話の救いは、クラスメイトから袋叩きに遭いそうな状況を瞬時に察した担任の先生がとった行動が、気まずい雰囲気を、汗と涙でキラキラ輝いた青春の思い出にガラッと根こそぎ変換させたことだ。
担任が彼女でなければ、主人公の女性は痛めつけられすぎて、同窓会なんて絶対行けなかったんじゃないかな。自分は小学校の同級生には会ったら恥ずかしい思い出が多い人ばかりなので、同窓会なんて絶対に行けない。
羞恥心が勝りすぎてショック死しそう。
そんな、かつてのクラスメイトにも堂々と会えないような、みっともない大人もいるってことで、この話を応援歌みたいにしておきましょう。
個人の一人一人は苦手意識があるけど、みんなで取り組んだ運動会や修学旅行、そしてダンボールキャンプや卒業式は、自分の中でいい思い出です。
もう二度と経験できない、戻れないからこそ、きらめく過去になっている。
そんな、懐古すると胸が傷んできそうな思い出たちを抱えて、30代を歩んでいきます。
みんなみんな必要なものだった!