アラサーバイ♂らむきーブログ

らむきー と申します。バイセクシュアルです。男の人も女の人も好き、ただどちらかと言うと男の人の方が好き。という 人間です。大阪在住。

地元を出るか出ないか。

光あれ/馳星周

この作家は初めてだが、とても面白かった。
生まれ育った町を大人になっても出ずにいる人の話。


この主人公(男)がクズ過ぎるのは一貫している。特に女関係。
世間体に極度に気を遣い、見栄を張りたいあまり給与に見合わない高級品を買ったり、虚栄心のために嘘をついたり、バリバリ田舎人間の自分には共感できる箇所多数。


仕事がない、景気が悪いと何度も口にするわりに、故郷(敦賀)を離れようとしない。
彼を引き止めるのは何なのか。
古くからの友人、キャバクラの女たち、かつての恋人。
田舎だからだろうか、古くからの友人との繋がりが強く、物語の中でも彼らの強固な関係性が色濃く描かれている。
むしろ、自分みたいな昔からの関係性が無いような人間の方が、思い切って田舎を出られるように思う。

物語中で描かれる敦賀は悲惨だ。景気が悪い、仕事がない、原発の危険性に一喜一憂する住民の生活、それらは人々の価値観へも大きく影響を及ぼす。

地理的には敦賀市から京都や大阪はそれほど遠いものでは無い。
しかし日本海、内海の敦賀湾に面する敦賀という場所は、どこか閉塞感を孕んでいる。入り組んでいる地形のせいか、周りに大きな町がないせいなのか、それともやはり原発のあるからなのか。

生まれた町から大人になっても出ず、同じところで一生暮らす人の人生。

自分の地元にもそういう人たちは一定数いて、みんな結婚し子供をつくって暮らしている。

小さい頃親と行っていた公園や店に、自分たちの子供を連れて通う日々。

人それぞれ幸せの定義は異なるし、軽蔑するつもりもない。

ただ、自分には規模が小さいが故に、人と人との距離が近く密度が濃い町で大人になっても暮らす生活が嫌だった。だからこそいま遠く離れた大阪にいる。
都会は楽だ。隣の人のことを気にする心配がなく、街中で知り合いに会う確率も田舎に比べて格段に低い。
故郷に比べ、空気は綺麗では無いかも知れないが、息のしやすさは分配が上がるのでは無いか、と思っている。

昔からの繋がりに足を引っ張られる危険性 が低い というのも、田舎から都会に出た人間のメリットでもあると思っている。
同じように都会に出てきた人たちに聞いても、似たようなことをみんな言う。
やはり都会は暮らしやすいようだ。精神的にも。

既に故郷が終の住処と思えなくなった自分にとって、都会から遠く辺鄙な地元は、たまに帰るからこそ良さを感じられるオアシスのような場所 になっている。

それなりに思い出もあるから、嫌いにはならない。
今でもとてもとても好きな場所である。