アラサーバイ♂らむきーブログ

らむきー と申します。バイセクシュアルです。男の人も女の人も好き、ただどちらかと言うと男の人の方が好き。という 人間です。大阪在住。

亡くなった作家の新しい本

2021年に膵臓がんで亡くなった作家、山本文緒 さんのエッセイ集。

帯の言葉が胸に刺さります。

ずっと読みたくて、でも既に亡くなっている方の話を読むのが怖くて、数ヶ月逡巡していたが、今回思い切って買った。

山本文緒さんの死を知ったのは半年前。
もう既に亡くなってしまったことに大変ショックを受けた。
彼女の小説はよく読んでいたし、どちらかと言うとエッセイを気に入って何度も何度も読み返していた。
気取らず自然体な言葉が詰まっていて、結婚、、離婚、再婚を綴った文章は何度読んでも色褪せなかった。

膵臓がんになり、緩和ケアを選択せざるをえない状況から日々紡がれた言葉たち。
山本氏の心情がはち切れんばかりに込められていた。
とりあえず120日生きよう、と自分のピリオドを決めてからそれを目指す生き方。
悔しかっただろうな。
悔しくも逝去の直前に著書が2つの文学賞を受賞したが、彼女は手放しで喜べない状態だったという。


「余命を宣告されたら、安らかな気持ちになれるのかと思っていたが、それは違った。
そんな簡単に割り切れるかボケ!と神様に言いたい気持ちがする」


帯のこれに集約されている。
がん は、宣告されてからお別れの期間があり過ぎるほどある。だから、お別れの言葉は言っても言っても言い足りない。と記されている。
彼女を訪ねてくる人々もどんな言葉をかければいいのか、どんな顔をしていけばいいのか、お互いに気を使う時期だっただろう。
彼女の人を労る優しさと、自身の病気に怒り、そして受容していくプロセスを感じることが出来た。

本書全体を通して、彼女は泣き言は言っても誰かを強く排斥したり糾弾することはなかった。
ガンになった、そんなものだろう、と自らの運命を割り切って考えているのが、文章から汲み取れた。それは、大きな覚悟が必要だったことだろう。自分がいつ死ぬのか宣告されるだけでも絶望的なのに、ご主人もよく献身的に彼女に尽くしたものだ。立派なお方です。
山本氏はもうこの世にいないけど、本は残る。
彼女が残してくれた数々の作品をこれから読み返すのが苦しいけど、思い出すだけ何にも無くしていないのだから(鬼束ちひろ Level rockより)、 前向きに生きていきたい。

山本さんありがとう。


ベランダの野菜たちもよく育ってきている。プチトマトは小さいけどちゃんと甘かった。
植物は手をかければそれに応えるように成長してくれる。 そのような人間になります。努力だ。